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東京地方裁判所 昭和41年(ワ)11863号 判決

主文

被告は原告に対し、金八九〇、〇〇〇円および内金八一〇、〇〇〇円に対する昭和四二年一月一日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

原告その余の請求を棄却する。

訴訟費用は五分し、その四を原告の、その余を被告の負担とする。

この判決は、第一項に限り仮りに執行することができる。

事実

原告訴訟代理人は、「被告は原告に対し、金四、四七〇、〇〇〇円および内金四、一七〇、〇〇〇円に対する昭和四二年一月一日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決ならびに仮執行の宣言を求め、請求の原因および主張として次のとおり述べた。

一、昭和四〇年四月二六日午後零時一五分頃、埼玉県草加市栄町七七七番地先道路において、訴外小川八郎の運転する自家用普通貨物自動車(足四ぬ七一四五)(以下被告車という)と、原告の運転する第一種原動機付自転車(以下原告車という)とが衝突し、原告は右大腿骨々折等の傷害を受けた。

二、当時訴外小川は被告会社の従業員であつて、被告は同訴外人をして被告車を運転させていたものであるから、被告は自動車損害賠償保障法第三条の運行供用者として、右の事故により原告の蒙つた損害を賠償すべき義務がある。

三、原告が、右の事故により蒙つた損害は次のとおりである。

(一)  入院治療費等

原告は右傷害のため昭和四〇年四月二六日から同年一〇月九日まで、草加市市民病院に入院して手術ならびに治療を受け、次いで同年一〇月一〇日から昭和四一年七月二七日まで越谷市名倉病院に入院して治療を受け、さらに同年八月四日から同年一二月二七日まで東京の厚生年金病院に入院して手術ならびにその他の治療を受け、現在なお通院治療を受けているが、右入院治療に要した費用は次のとおりである。

(1)  草加市、市民病院

入院治療費         金 四三、六五〇円

牛乳代           金 三、一二〇円

(2)  越谷市、名倉病院

入院治療費         金 六七、八三〇円

付添代           金三〇〇、〇〇〇円

牛乳代           金  八、〇四〇円

燃料代           金 二五、三八〇円

(3)  厚生年金病院

入院費           金    九三〇円

交通費(転院のため)    金  一、八八〇円

牛乳代           金  八、九〇〇円

(4)  輸血代等

輸血代           金 五〇、〇〇〇円

輸血の謝礼         金 四五、五四〇円

以上(1)ないし(4)の合計金五五五、二七〇円のうち金五〇、〇〇〇円は、自動車損害賠償責任保険から支払を受けたので、その残額は金五〇五、二七〇円となる。

(二)  得べかりし利益の喪失

原告は、事故当時、草加市水道部給水係(草加市高砂町一番地)に勤務し、給与月額一六、七二〇円を得ていたが、本件事故による負傷のため休職となつて給与は右月額の八〇パーセントに減額され、したがつて昭和四〇年七月一日から同年八月三一日までは月額金三、三四四円の減収となつた。また同年九月一日からは月額金一八、七〇〇円に給与が改訂されたが、同じく休職のため月額金三、七四〇円の減収となり、その後昭和四一年七月一日からは無給となつたので、月額金一八、七〇〇円の減収となつた。したがつて右の事故による得べかりし利益の喪失による損害は次のとおりである。

(1)  昭和四〇年七月一日から同年八月三一日までの間は金六、六八八円

(2)  昭和四〇年九月一日から昭和四一年六月三〇日までの間は金五二、三六〇円

(3)  昭和四一年七月一日から同年一二月三一日までの間は金一一二、二〇〇円

以上合計金一七一、二四八円

(三)  慰藉料

原告は、生来健康に恵まれ、本件事故当時は昼は前記草加市役所に勤務し、夜は中央大学法学部三年に通学して、真面目に勉強していた二六才の前途有為の青年であつて、もし本件事故に遭遇しなければ、来る三月には右大学を卒業し新しい人生の首途に出発する予定にあつた者である。しかも原告は本件事故により昭和四〇年四月二六日から現在まで入・通院加療中の身であり、その間大手術を数度にわたつて受け、その度に輸血され、あまつさえその手術のため右足は六糎程短くなり、正座は絶対にできず、未だ足は曲がらぬ状態である。そしてその間に受けた精神上の苦痛は到底筆舌に尽し難い程甚大であり、それに対し被告は一片の誠意どころか見舞にも来ず、一言の謝意さえも表明しない。よつてこの精神的損害に対し被告は慰藉料を支払う義務があり、その額は金三、五〇〇、〇〇〇円を下らないものというべきである。

(四)  以上(一)、(二)、(三)を合計すると、原告は被告に対し合計金四、一七〇、〇〇〇円(一〇、〇〇〇円未満切捨)の損害賠償請求権を有することとなる。

(五)  弁護士費用

原告は、昭和四一年一二月五日被告が右損害を賠償しないため、第二東京弁護士会所属弁護士の原告訴訟代理人に対し、右金四、一七〇、〇〇〇円の損害賠償請求権について被告を相手方として訴訟の提起を委任し、その手数料および謝金につき右弁護士会報酬規定の最低額を依頼の目的を達したときに支払うことを約したので、結局手数料、謝金併せて金三〇〇、〇〇〇円(請求すべき損害額は金四、一七〇、〇〇〇円であるから、前記報酬規定に定められた訴額五、〇〇〇、〇〇〇円以下の場合の手数料、謝金額の標準の最低割合の八分によつて求めた額金三三三、六〇〇円の範囲内できめた額)を第一審判決言渡日に支払うべき債務を負担したこととなり、同額の損害を蒙つた。

四、よつて原告は被告に対し、以上合計金四、四七〇、〇〇〇円および右の内弁護士費用を除いた金四、一七〇、〇〇〇円に対する昭和四二年一月一日から支払ずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

五、本件事故は訴外小川の過失によつて発生したものである。すなわち本件事故現場は幅員七・六五米の南北道路と幅員五・五米の東西道路(但し交差点から東側に入る道路は幅員三・六米)との交通整理の行われていない交差点で、訴外小川は被告車を運転し右の南北道路を南から北に向かつて時速約四〇粁以上の速度で走行し、右交差点近くまで至つたところ、約四〇米前方を同一方向に進行していたマイクロバスが同交差点で左折し始めるのを認めた。ところで同交差点はもともとその進行方向左側に高さ約二米のコンクリート塀と電柱があつて、被告車の進行方向からみてその西側道路方面の見とおしが全くきかない状態にあるうえ、たまたまマイクロバスが左折中で、西側道路の交通状況は右バスの右側を通過し終る頃でないとみえず、また西側道路から進行して来る車も右バスや塀のため被告車進行道路の真中付近まで出ないと被告車の接近しているのがみえない状況にあることを訴外小川としても充分承知していたのであるから、かかる場合訴外人としては、バスの背後から被告車進行道路に出てくる歩行者・車輛等があるかも知れないことを予想し、前方の注視に努め、警笛の吹鳴をバスの背後を通り抜けるまで継続して被告車の接近していることを知らせるとともに、左折バスとの間隔を充分にとり、減速徐行し、危険の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのにもかかわらず、これらを怠り警笛も吹鳴せず、徐行もせず、漫然と同一速度で進行し左折中のマイクロバスの右側を追越そうとしたため、マイクロバスの蔭から交差点中央に乗り出した原告車に被告車の前部を衝突させ、同人を約一三米飛ばし、右大腿骨々折等の重大な傷害を与えたものである。

しかも右衝突地点は幅員七・六五米の南北道路の西側から四・三米、したがつて東側から三・三五米の地点であり、その衝突地点からして原告は既に交差点の半分以上も進行していたものであることが明らかであり、つまるところ原告の方が交差点に先入していた関係にあつたのである。

道路交通法三六条は交差点に進入する車輛相互間の優先順位を定めたものであるが、一方同法第四二条は見とおしのきかない交差点に進入する車輛全てに対し適用があるもので、交差する一方の車輛に対し優先する場合でも同条の徐行義務が解除されるものではない。

被告は、最高裁判所判決を援用し、いわゆる「信頼の原則」を主張するが、本件事故は前記のように訴外小川の重大な過失によつて発生したものであるから、右最高裁判所判決の確認した「信頼の原則」の適否を論ずる以前の問題であり、仮りに「信頼の原則」の適否を論ずるとしても右判決は「特別の事情のない限り」という限定を付しているのであつて、本件はその「特別の事情」が存する場合に該当するから、「信頼の原則」を適用すべき場合でない。

被告訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、請求の原因に対する答弁および主張として、次のとおり述べた。

一、請求原因第一項の事実は認める。

二、同第二項中訴外小川八郎が被告の従業員であることは認める。

三、同第三項中原告が入院したことは認めるが、損害については争う。

四、本件事故は原告の重大な過失によつて惹起されたもので、訴外小川に過失はない。すなわち

(一)  本件事故は交差点における衝突事故であるが、原告車の進行して来た道路は幅員約四・五米の路地であり、被告車の進行していた道路は幅員約七・六米の国道である。訴外小川は東京方面から群馬県館林倉庫に赴くべく被告車を運転し、制限速度時速五〇粁のところを四〇粁で一方通行の右国道を進行し、右交差点に差しかかつたところ、被告車の前方約三〇米のところをマイクロバスが走行しており、同バスが方向指示器を点滅し左折の合図をしながら左側端に寄り減速し始めたので、被告車がバスの右側に出て進行したところ、突然左側の路地から原告車が飛び出して来たので、訴外小川はその瞬間に急ブレーキを踏んで衝突を回避しようとしたがスリツプしたため遂に衝突したものである。

(二)  原告は徐行義務に違反した。

右のとおり原告車の進行していた道路は被告車の進行していた道路に比して明らかに狭いのであるから、原告は道路交通法第三六条により徐行すべき義務があるのに拘らず、右義務に違反し徐行しなかつた。

(三)  原告は被告車の優先通行権を侵害した。

右のように被告車の進行道路が原告車の進行道路より明らかに広いのであるから道路交通法第三六条により被告車が優先し、原告車は被告車の進行を妨げてはならないのに拘らず、原告は被告車を優先させず、自ら優先して進行しようとした。

(四)  右のような状況のもとにおいては、最高裁判所昭和四一年一二月二〇日判決で示されたとおり被告車は原告車側で交通法規を遵守し、被告車との衝突を回避するため適当な行動に出ることを信頼して運転すれば足りるのであつて、原告車のように敢えて交通法規に違反し被告車の前面を突破しようとする車輛のあることまでも予見して左側に対する安全を確認し事故の発生を未然に防止すべき注意義務はない。

以上のとおり本件事故は原告の重大な過失によつて惹起されたもので、訴外小川に過失はないから被告に本件損害賠償義務はない。

立証(省略)

理由

一、(事故の発生)

原告主張の日時場所で原告運転の原告車と訴外小川八郎運転の被告車とが衝突し、原告が右大腿骨骨折等の傷害を受けたことは当事者間に争いがない。

二、(被告の責任)

訴外小川八郎が被告の従業員であることは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第一一五号証および証人小川八郎、同前田欣二の各証言によると、被告車は被告の所有で、訴外小川は被告の荷物を館林市所在の被告の倉庫に運搬すべく、被告車を運転して右倉庫に向う途中本件事故を惹起したものであることが認められるから、被告は免責事由の存在が立証されないかぎり、被告は運行供用者として自動車損害賠償保障法第三条により本件事故によつて原告の蒙つた損害を賠償すべき義務があるものといわなければならない。

被告は訴外小川は無過失である旨主張するのでその点について判断するに、成立に争いのない甲第一一四号証の一ないし八、同第一一五ないし第一一八号証、乙第一号証、証人前田欣二、同小川八郎の各証言および原告本人尋問の結果を総合すると、本件事故現場は東京方面から越ケ谷市方面に向つて南北に通ずる幅員七・六五米の国道四号線とこれに直角に交差する幅員四・五米(東側道路は幅員三・六米)との交通整理の行われていない交差点であること、訴外小川は被告車を運転して右国道を東京方面から越谷市方面に向かつて時速約四〇粁で進行し、右交差点近くまで差しかかつたところ、約四〇米前方を走行していたマイクロバスが減速のうえ右交差点で左折し始めたので、これを追い抜くべく、ハンドルを右に切り、そのままの速度でバスの右側に出たところ、左側道路から交差点に進入して来た原告車を約六・九米の地点に発見したので直ちにブレーキを踏んだが間に合わず、被告車の前部と原告車とが衝突するに至つたものであること、もともと右交差点はその南西角すなわち被告車の進行方向左側の南側角にはコンクリート塀があつて、相互の見とおしが悪い交差点であることがそれぞれ認められ、右認定を左右する証拠はない。

右認定事実にもとづいて考えるに、本件交差点は交通整理が行われておらず、もともと見とおしがきかないうえ、たまたま先行のマイクロバスが左折中で見とおしが益々きかなかつたのであるから、訴外人としては左右道路特に左側道路から交差点に進入してくる車輛があるかも知れないことを予期し、予め減速して徐行し左右道路の交通の安全を確かめたうえ進行すべき義務があるのに拘らず、これを怠つて時速四〇粁のまま進行した点において過失があるものといわざるをえない。

もちろん双方の道路幅からすると、被告車の進行道路の方が原告車の進行道路より明らかに広いから、道路交通法第三六条により被告車の方が優先し、原告車としては徐行するとともに左右道路の安全を確認し、被告車の進行を妨げてはならない義務があるのにも拘らず、これらを怠つたまま(原告はその本人尋問において交差点進入前に一時停止した旨およびマイクロバスの後続車はなかつた旨供述するが、現に本件事故が発生しているところからして仮りに一時停止したとしても左方の安全確認に疎漏があつたと断ぜざるをえない)交差点内に進入した点において原告の過失を否定することはできないが、それだからといつて同法第四二条による被告車の徐行義務が解除されるものではない。また被告はいわゆる「信頼の原則」の適用を主張するが、交通整理が行われておらず見とおしがきかない交差点で狭い道路から徐行をせずに車輛が進入してくる事例は住々みられるところであり、通常予期できないことではないから、本件の如き場合には「信頼の原則」の適用ないものというべきである。

したがつて、本件事故の発生につき訴外小川にも過失があつたものというべく、その余の点について判断するまでもなく、被告の免責を認めることはできない。

ところで、原告にも本件事故の発生につき過失があつたことは右のとおりであり、その過失の度合いは訴外小川の過失より大きいものといわざるをえない。

原告は、衝突地点の位置からして原告車が先入車輛である旨主張するが、それだけで交差点進入の先後を決定することはできず、前記認定の事故状況からすると、原告車が先入車輛とは言えない。

三、そこで損害について判断する。

(一)  入院治療費等

成立に争いのない甲第二ないし第一九号証、同第九九ないし第一〇六号証、同第一〇八号証、同第一一〇、第一一二号証、原告本人尋問の結果によつて真正に成立したものと認められる甲第六九号証、同第九一ないし第九八号証、同第一一九号証および原告本人尋問の結果によると、原告は本件事故による受傷のため事故当日の昭和四〇年四月二六日から同年一〇月九日まで草加市所在の草加市民病院に入院して手術ならびに治療を受けたが、経過が思わしくないため同月九日から越谷市所在の蒲生名倉医院に転院し、翌四一年七月二七日まで入院して刺激療法を受けたが、依然として経過が思わしくないため、同年八月四日東京都所在の東京厚生年金病院に入院して手術ならびに治療を受け、同年一二月二八日退院したが、結局右下肢が六糎短縮という後遺症が残り、現在なお通院中であること、そして

(1)  右草加市民病院においてその入院治療費として金四三、六五〇円(甲第三号証)、牛乳代として金三、一二〇円(甲第九九ないし第一〇二号証)を支出し

(2)  蒲生名倉病院においてその入院治療費として金六七、八三〇円(甲第五号証)、付添婦代として金三〇〇、〇〇〇円(甲第一一二号証)、牛乳代として金八、〇四〇円(甲第一三ないし第一九号証)、燃料代として金二五、三八〇円(甲第一一九号証)をそれぞれ支出し

(3)  右東京厚生年金病院においてその入院治療費として金九三〇円(甲第一〇八号証)、交通費として金一、八八〇円(甲第六九号証)、牛乳代として金八、九〇〇円(甲第一〇三ないし第一〇六号証)をそれぞれ支出し

(4)  右草加市民病院における手術の際の輸血代として金五〇、〇〇〇円(甲第一一〇号証)、血液供給者に対する謝礼として金四五、五四〇円(甲第九一ないし第九八号証)をそれぞれ支出し

以上合計金五五五、二七〇円の損害を蒙つたことが認められ、他に右認定を左右する証拠はない。

しかして右のうち金五〇、〇〇〇円は原告において受領した自動車損害賠償責任保険金をもつて充当したことは原告の自陳するところであるから、残額は金五〇五、二七〇円となるところ、前記認定のとおり本件事故の発生について原告にも過失があるからこれを斟酌すると、被告に賠償を命ずべき額はその約三割に当る金一六〇、〇〇〇円が相当と認められる。

(二)  得べかりし利益の喪失

成立に争いのない甲第一一一号証および原告本人尋問の結果によると、原告は事故当時草加市役所の水道検針係として勤務し、月額金一六、七二〇円の給与を得ていたが同年七月一日から休職を命ぜられて給与の二〇パーセント(金三、三四四円)を減ぜられ、昭和四〇年九月一日から給与改訂により月額金一八、七〇〇円(減額分金三、七四〇円)となつたが、昭和四一年七月一日休職期間が延長されるとともに給与が無給となり、昭和四二年二月漸く復職するに至つたこと、そのため昭和四〇年七、八月の減額分合計金六、六八八円、同年九月一日から昭和四一年六月三〇日までの減額分合計金五二、三六〇円、同年七月一日から同年一二月三一日までの給与合計金一一二、二〇〇円、以上合計金一七一、二四八円の得べかりし利益喪失による損害を蒙つたことが認められ、他に右認定を左右する証拠はない。

しかして、前同様原告本人の過失を斟酌すると、右のうち被告に賠償を命ずべき額はその約三割に当る金五〇、〇〇〇円が相当と認められる。

(三)  慰藉料

前記認定にかかる傷害の程度、治療状況および後遺症の存在等からすれば、原告が本件事故によつて多大の精神的苦痛を蒙つたことは容易に推認され、その他本件事故の態様、被告側の態度等諸般の事情ならびに原告の過失を考慮するならば、その慰藉料額は金六〇〇、〇〇〇円が相当と認められる。

(四)  弁護士費用

当裁判所が真正に成立したものと認める本件記録中の原告作成名義にかかる委任状によれば、原告は昭和四一年一二月原告訴訟代理人に対し、本件訴訟の提起を委任したことが認められ、その際手数料および謝金支払の約定をしたことは容易に推認されるところである。しかして交通事故事件においては不必要な訴えの提起等特段の事情のないかぎり、弁護士費用も認容額、事件の難易等を考慮して相当と認められる額は事故と相当因果関係にたつ損害とみるべきであり、本件においてその額は金八〇、〇〇〇円が相当と認められる。

四、以上の次第であるから、原告の本訴請求中三の(一)ないし(四)の合計金八九〇、〇〇〇円および右のうち(四)の弁護士費用を除いた金八一〇、〇〇〇円に対する昭和四二年一月一日から支払ずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を求める部分は理由があるからこれを正当として認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九二条本文、第八九条を、仮執行宣言につき同法第一九六条を適用し、主文のとおり判決する。

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